今、人間の、人間臭い部分を存分に味わいたいあなたにおすすめの映画
観た理由:宮部みゆき原作ものの映画化ということで、気になった。
ジャンル:サスペンス
泣ける度:
–前編・あらすじ–
クリスマスの朝、雪に覆われた中学校の校庭で柏木卓也という14歳の生徒が転落死してしまう。彼の死によって校内にただならぬ緊張感が漂う中、転落死の現場を目にしたという者からの告発状が放たれたことによってマスコミの報道もヒートアップ。さらに、何者かの手による殺人計画の存在がささやかれ、実際に犠牲者が続出してしまう。事件を食い止めようともせず、生徒たちをも守ろうとしない教師たちを見限り、一人の女子生徒が立ち上がる。彼女は学校内裁判を開廷し、真実を暴き出そうとするが……。–前編・あらすじ–
被告人大出俊次(清水尋也)の出廷拒否により校内裁判の開廷が危ぶまれる中、神原和彦(板垣瑞生)は大出の出廷に全力を尽くす。同様に藤野涼子(藤野涼子)も浅井松子(富田望生)の死後、沈黙を続ける三宅樹理(石井杏奈)に証人として校内裁判に出廷するよう呼び掛ける。涼子は柏木卓也(望月歩)が亡くなった晩、卓也の自宅に公衆電話から4回の電話があったと知り……。
〈シネマトゥデイ〉
映画の率直な感想から
前編・後編合わせて一つの作品と考えるべき映画のため、二本で一つの映画としてレビューを書く。
いつものように、今作品も、原作は読まずに映画を鑑賞。
したがって、原作のこの部分が削られてて残念だったとかいう下りはこのレビューにはない。
原作の世界観を壊してほしくなければ、映画化されたものは観ないほうがいい。
では本題へ。
二本立ての映画はあまり好きではなく、疲れるのでなるべく一つの映画は一本二時間前後に収めてほしい派ではあるが、この大作に、四時間超必要だったのは、うなずける。
それほどまでにすばらしく、見応えある映画。
一つ惜しいのは、前編がプツリと突然終わってしまうところか。
前後編もの映画の場合、ある程度単体でストーリーが構成されることを望むが、この映画は突然プツリとくる。
映画館で鑑賞された方のあ然ぶりが想像できる。
ゆえに、DVDを前後編二枚同時にかりるなどして、一気に二本観るべき映画。
前編121分、後編146分と、長いので、ある程度覚悟して観ることにしましょう。
人気作家、宮部みゆき氏のサスペンス小説がもとになっている映画で、すごく込み入った仕掛けがあるストーリーを想定するも、それほど豪勢な仕掛けはない。
逆に、現実にありそうな素材で組み立てられたストーリーだけに、よりリアルさが増している。
事実を隠そうとする学校であったり、憶測から決めつけて報道するマスコミだったり
学校では生徒同士がお互い干渉し合わず、また、不良グループの一員であれど、本当の友達同士という訳でもない。
そんな、ありふれた日常の中、一人の生徒が校内で転落死する。
その、一人の少年の死を巡って、それぞれの思惑が交差する。
一人が動くと隣りに伝播する。またその一人が動くと、そのまた隣へ。
人の獲物にありつこうとハイエナのように寄ってくる者。一方で、欲望の渦に巻き込まれ、人生を台無しにする者。
結局誰のための何の裁判だったのか。
各々が各々に答えを持って、散っていく。
算数ではなく国語、マークシートではなく記述式、的な、解釈に柔軟さを与えてくれるストーリー。
そして観終わった後、観る者それぞれに課題を与えてくれる。
人間の、人間臭い部分を存分に味わいたいあなたにおすすめの映画。
裁判もの映画ではなく、人間成長もの映画
学校内で、何の裁きも下らない裁判なんてやって意味あるの?
他人事のように薄ら笑いしながら傍聴するその他生徒一人のように、この「裁判ごっこ」がどういう形で進んでいくのか、もしかして、ものすごくくだらない展開になるんじゃないかと、半信半疑で鑑賞。
正直、裁判の結末自体に納得を得られない人は少なくないかもしれない。
しかし、子ども達が自ら調べた情報を元に、自分たちの力で問題を提起し、議論し、各自が納得解を得ていく過程に、十分満足が感じられたのではないだろうか。
そもそも大人でもここまでの問題解決能力を発揮するのは難しいところ。
そこを中学生が裁判をするという形で、問題解決能力の不足している、成長が止まっている大人たちにもわかりやすく、それら困難への対応方法を、そして人間が成長していく様を示してくれたこの映画の功績は大きい。
現実からなるべく目を背けようとする先生たちやその他大人たちが、非常に対照的に描かれていることが、中学生たちの行動力をより引き立たせる。
裁判もの映画として観ると、納得感低いかもしれないが、人間成長もの映画として観ると、実に見応えあり。
「事実は小説よりも奇なり」というのを、あえて小説の中で表現
すべての答えを知ろうとすると、よくわからなくなる。
でも現実の世界って、全ての行動が個々に明確な動機で裏付けられているものなのだろうか。
何を考えているかよく分からない、ちょっとお近づきになれない、なんだか怖い、そんなやつ、周りに一人ぐらいいるだろう。
この映画には、説明できない謎の行動がいくつかあり、それらも含めてリアル感を感じることができる。
リアルライフでは、隣に住む何の罪もない人を殺そうとする人もいるだろう。
昨日まで元気でいたやつが、今日いなくなってるなんてことも珍しくない。
その点において、必要な材料を用意して、それらすべてを無駄なく使って綺麗に辻褄を合わせてくる映画とは一線を画したストーリー展開に、妙にリアルさを感じた。
「事実は小説よりも奇なり」というのを、あえて小説の中で表現した具合で。裏の裏は表、みたいな。
最後にひとこと感想
この映画の舞台となる中学校を見て、自分の中学生時代を思い出す。
まさに昭和の中学校という感じで、先生は生徒に指導という名の暴力を振るい、一方で、手のつけられない不良は放っておくという構図が懐かしい。
当時、中学校の先生全員嫌いだったからな。
金八先生はテレビの中だけの話で。
予告編